歴史

彼岸花(曼殊沙華)

2019.09.13(金)

1、彼岸花とは

「もうすぐお彼岸ですよ」と毎年決まったように咲き始める彼岸花。この地域でも犀川、五六川などの堤防、道端の土の下で今か今かと出番をうかがっている頃ですね。

彼岸花は子供の頃、きれいだと摘んできて親に叱られたりして、少し近寄りがたく不思議な花という印象を持つ人が多い花ですが、昔の人は彼岸花を暮らしを守るためさまざまに利用してきました。

全国で呼び名が数百もあると言われ、人々と永きにわたり深い関わりがあった花だとわかります。

曼殊沙華とは

彼岸花は曼殊沙華ともいわれます。

天上に咲くおめでたい花の意だそうです。

1日の最低気温が12°c位になると土から芽を出し、1日10㎝くらいう位ずつ芽が伸びます。50㎝程で先に花をつけます。

2、彼岸花の1年

彼岸の頃になると土から芽を出して一気に伸びて赤い花をつけます。花が終わると葉が出てきます。

球根(りん茎)にある毒と悪臭で動物や虫から自分を守ってきました。

他の植物が枯れている冬に葉を地面いっぱいに広げて日光を独り占め、球根に栄養を蓄えます。

多くの植物が芽を出す頃、逆に葉が枯れます。生き残るため、競争より他と違うサイクルの生き方を選んだ個性ある花です。

暑い夏はじっと土の中、だから田の草刈りも全然関係なし!他の草がきれいに刈り取られた後にゆうゆうと1人舞台

3、たくさんある彼岸花の呼び名

呼び名1

葉がなく、まず花が咲くことから

マッサキ

まずさく→マンズサク→マンジュシャゲとなったとか

他 葉欠け・葉無し・葉抜け・葉こぼれ

呼び名2

いっきにそろって咲くから

イチジバナ・イットキバナ・イッショバナ・ソロイバナ

呼び名3

りん茎に毒を持つため

ドクバナ・シビレバナ・テグサリ・テハレグサ・シタマガリ・・・

彼岸花の毒を利用

この毒を嫌うもぐら、ねずみ、野犬や虫を遠ざけるために田の畦、川の土手、家、お墓などに植えられました。

①彼岸花を植えた田の畦や川の土手は穴を掘られて水が流出することから守られます。

②彼岸花を植えた家、お墓はねずみなどに荒らされることから守られます。植えるだけでなく、球根をすりおろして土壁や障子を貼るのりに混ぜて利用しました。

呼び名4

飢饉の時の大切な食糧だったことから

オイモチ・ヒオモチ・チカラコ・ミズコ

りん茎の良質なデンプンを利用

りん茎には良質なデンプンが含まれており、すりおろして何度も水にさらすと毒が抜けるため、団子にして飢えをしのいだそうです。

呼び名5

そのまま食べると毒になっても、つけると薬になることから

クスリグサ

ミカンの間に葉をはさむと乾燥と腐るのを防ぐから、ミカンの輸送に使われました。

ミカンバナ

その他の呼び名

花が枯れてから葉が出るため、お互いに決して出会う事がなく、花は葉を思い、葉は鼻を思うというロマンチックで少し悲しい名前

葉見ず花見ず

韓国語で相思華というそうです。

他と競うより独自のサイクルと個性で生き延びる彼岸花、お彼岸の頃に一斉に一面に咲く赤いじゅうたんを見るとこの季節の一人勝ちといった印象を受けます。

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