信長と中山道

瑞穂市を通る中山道は岐阜城から天下統一をめざした信長が近江方面へと通った道です。（紙版ミニコミ番号：第55号 H23.8発行）

信長の道

古代、旧真正地域を通る東山道(中山道より北を通る道)がこの地域の主要道路でした。しかし、信長の岐阜城入城後、赤坂・垂井・佐和山を通る京への最短コースとして、のちの中山道ルートが整備されていったと思われます。

1567年　信長は斎藤竜興を倒し、美濃を手中におさめ井ノ口を岐阜と、稲葉城を岐阜城と改めました。

岐阜城を拠点に「天下布武」をうたい、楽市楽座などの改革をしながら本格的に天下統一へ向けて中山道を奔走します。

※立政寺(立正寺)　

後の室町幕府15代将軍となる足利義昭は、兄で第13代将軍義輝が永禄の変で倒された後奈良を逃れ、六角氏(近江)朝倉氏(越前)などを頼り将軍家再興を諮ろうとしますが、上洛はかないませんでした。

信長が上洛を申し出て、永禄11年(1568)7月に足利義昭をこの寺に迎え、9月に京へ上洛するまで僧坊「正法軒」を御座所として保護しました。

義昭を奉じて上洛を果たした信長は天下統一への道を大きく一歩進めた事になります。

(岐阜市西荘3丁目)

呂久の渡し

天正8年(1580)に信長の息子信忠により呂久の渡しが開設されている事からみて、信長の岐阜城から京へは既にここを渡っていたと考えられます。

家臣、稲葉一鉄の居城曽根城が近かった事もこの渡しをルートとした要因かもしれません。

『信長公記』にみる呂久の渡し・曽根城(現代訳)

天正3年7月17日　

「曽根に立ち寄った。曽根の城主　稲葉一鉄はありがたいことと感激し、孫たちに能を演じさせて信長に観せた」

天正10年3月6日

「仁科盛信の首を届けて来たのを呂久の渡しで検分し、岐阜へ運ばせて長良川の河原・・・。」

天正10年4月21日

「呂久の渡しでは稲葉一鉄が御座船を飾りたてて良いし、船中で酒肴の接待をした」

※『信長公記』は信長家臣太田牛一により書かれた信長一代記で史料性が高いとされている書。

岐阜城主であった9年間、上洛に合戦に調略にと信長はこの道を奔走しました。

『信長公記』にみる岐阜城から京方面への信長の動き

1568年8月

(永禄11年)

義昭を奉じて上洛に必要な道中の諸勢力の交渉のため佐和山城へ入る。

1568年9月

(永禄11年)

近江へ出陣、平定後義昭と共に上洛、義昭が将軍に任命されると翌10月岐阜城へ帰城。

1569年1月

(永禄12年)

本圀寺の変に勝利したと報告を受け大雪の中を上洛、5月に岐阜へ帰城。

1569年10月

(永禄12年)

伊勢平定後報告に上洛、岐阜へ帰城。

(元亀元年)

1570年2月

信長が畿内近国の諸勢力へ上洛を促す触書を送ったため諸侯と会う為自らも上洛、5月に岐阜へ帰城。

1570年6月

(元亀元年)

小谷城攻め後上洛、7月岐阜城へ帰城。

1570年12月

(元亀元年)

8月に南方から畿内へ出陣、石山本願寺と交戦、浅井朝倉との和睦などを経て、この月、久しぶりの岐阜へ帰城。 

1571年8月

(元亀2年)

5月一向一揆討伐のため伊勢長島へ攻めたが惨敗、退却後、8月江北へ出陣。

1572年3月

(元亀3年)

江北に出兵、赤坂に一泊、戦を部下に任せ上京。5月に岐阜へ帰城。

1572年7月

(元亀3年)

江北へ出兵、赤坂に一泊。

1573年3月

(元亀4年)

将軍義昭が信長に謀反を企てていることが明るみになり、和平を迫るため上洛。

1573年8月

(天正元年)

江北へ出陣、朝倉氏を倒し浅井氏小谷城を落城させ9月、岐阜へ帰城。

1573年11月

(天正元年)

上洛して二条妙覚寺に宿泊、三好義継若江城を落城させ12月岐阜へ帰城。

1574年3月

(天正2年)

上洛して相国寺へ宿泊、5月甲斐武田氏へ対応のため、岐阜へ帰城。

1575年2月

(天正3年)

上洛のため垂井に宿泊。河内を平定後京へ凱旋、4月岐阜へ帰城。

1575年6月

(天正3年)

急用で上洛、7月岐阜へ帰城。(帰り途中に曽根城へ立ち寄る。)

1575年8月

(天正3年)

越州へ出立、垂井に宿陣、9月岐阜へ帰城。

1575年10月

(天正3年)

鷹を連れて上洛に出立、垂井に宿泊11月岐阜へ帰城。

この年の11月に家督を嫡男信忠に譲った。

1576年2月

(天正4年)

信長、安土城に居を移す。

1576年12月

(天正4年)　

吉良での鷹狩りの行き、安土城から岐阜城に寄って一泊、帰りは岐阜城で年を越した。

1577年12月

(天正5年)　

吉良での鷹狩りの行き、岐阜城で2泊、帰りに一泊滞在。

1582年3月

(天正10年)　

武田勝頼を討つため甲斐へ出陣時、4月の帰還時、岐阜に滞在。(呂久の渡しで行きは首実検帰りは稲葉一鉄酒宴)

こうしてみてくると、岐阜城から京までの中山道は信長天下統一のための道であったと言えるでしょう。

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